栃木県少年支援者の会


社会内処遇のための最低規則



・社会内処遇のための国際連合標準最低基準
(東京規則)

1990年12月14日国際連合総会第45回会期決議45−110

 1 一般原則

 1 基本目的
1・1 この標準最低規則は、社会内処遇の利用、並びに、拘禁代替策に服する者のため最低限の保護を助長するために、一連の基本原則を定める。
1・2 この規則は、刑事司法の運営、特に犯罪者の取扱いに地域社会がより一層関与することを助長し、並びに、犯罪者の間に社会に対する責任感を増進することを目的としている。
1・3 この規則は、各国の政治的、経済的、社会的及び文化的状態並びにその刑事司法制度の目的及び目標を考慮して実施されなければならない。
1・4 国際連合加盟国は、この規則を実施するときは、個々の犯罪者の権利、犠牲者の権利並びに公共の安全及び犯罪防止に対する社会の関心の間に適当な均衡を確保するよう努めなければならない。
1・5 加盟国は、他の選択を提供して拘禁の使用を減少させ、かつ、人権の遵守、社会正義の要求及び犯罪者の更生の必要を考慮して刑事司法政策を合理化するために、自国の法制度内に社会的処遇を発展させなければならない。

 2 社会内処遇の範囲
2・1 この規則の関連規定は、訴追、公判又は判決の執行に服するすべての者に対して、刑事司法運営のすべての段階で適用されなければならない。この規則の適用上、これらの者は、容疑者であるか被告人であるか又は判決の宣告を受けた者であるかにかかわりなく、「犯罪者」という。
2・2 この規則は、人種、皮膚の色、性、年齢、言語、宗教、政治的意見その他の意見、国民的若しくは社会的出身、財産、出生又は他の地位に基づくいかなる差別もなしに適用されなければならない。
2・3 犯罪者の性質及び重大さ、犯罪者の性格及び経歴並びに社会の保護と両立する一層大きな柔軟性を与え、かつ、拘禁の不必要な使用を避けるために、刑事司法制度は、公判前の処置から判決後の処置まで、広範な社会内処遇を与えるべきである。利用できる社会内処遇の数及び種類は、首尾一貫した判決言渡し手続きが可能となるような仕方で決定されるべきである。
2・4 新しい社会内処遇の開発が、奨励されかつ厳格に監視され、また、その使用が体系的に評価されるべきである。
2・5 できる限り公式の手続き又は裁判所による公判に訴えることを避け、法的保障及び法の支配に従って犯罪者を地域社会内で取り扱うことに、考慮を払わなければならない。
2・6 社会内処遇は、最小限介入の原則に従って使用されるべきである。
2・7 社会内処遇の使用は、非刑罰化及び非刑罰化への発展の一部であるべきであり、その方向の努力を妨げ又は遅らせるものであってはならない。

 3 法的保障
3・1 社会内処遇の導入、定義及び運用は、法律で規定しなければならない。
3・2 社会内処遇の選択は、犯罪の性質及び重大さ並びに犯罪者の性格及び経歴の双方に関する確立した基準の評価、判決言渡し手続きの目的並びに犠牲者の権利に基づかなければならない。
3・3 司法機関又は他の権限のある独立機関による裁量は、手続きのすべての段階で、完全な責任を引き受けることによってかつ法規に従ってのみ行使されなければならない。
3・4 犯罪者に義務を課し、正式手続き若しくは裁判の前又はそれに代わって適用される社会内処遇は、犯罪者の同意を得なければならない。
3・5 社会内処遇適用の決定は、犯罪者からの申立がある場合には、司法機関又は他の権限のある独立機関による審査を受けなければならない。
3・6 犯罪者は、社会内処遇の実施に当たって自己の個人的権利に影響を与える問題に関して、司法機関又は他の権限のある独立機関に要請又は苦情申立を行う権利を有する。
3・7 国際的に承認された人権の不遵守に関する苦情を訴え、かつ、可能ならば、それを矯正するために、適当な機構が設置されなければならない。
3・8 社会内処遇は、犯罪者に対する医学的若しくは心理的実験又は肉体的若しくは精神的危害の不当な危険を伴うのもであってはならない。
3・9 社会内処遇に服せしめられる犯罪者の尊厳は、すべての時に保護されなければならない。
3・10 社会内処遇の実施に当たっては、犯罪者の権利は、最初の決定を下した権限のある機関によって認められたもの以上に制限してはならない。
3・11 社会内処遇の適用に当たっては、犯罪者の私生活の権利は、その家族の私生活の権利と同様に、尊重されなければならない。
3・12 犯罪者の個人記録は、第三者に対して厳密に秘密かつ非公開とされなければならない。そのような記録の閲覧は、犯罪者の事件の処理に直接関係のある者又は他の正当に権限を与えられた者に限らなければならない。

 4 留保条項
4・1 この規則のいかなる規定も、被拘禁者取扱いのための標準最低規則、少年司法運営のための国際連合標準最低規則(北京規則)、あらゆる形態の抑留又は拘禁の下にあるすべての者の保護のための諸原則、又は、国際社会によって承認されかつ犯罪者の取扱い及びその基本的な人権の保護に関する他の人権文書及び人権基準の適用を排除するものと解釈してはならない。

 2 公判前段階

 5 公判前の処置
5・1 適当でかつ法制度と合致する場合には、刑事事件を取り扱う警察、検察局その他の機関は、社会の保護、犯罪防止又は法律及び犠牲者の権利の尊重増進のために訴訟手続きをとる必要がないと考えるならば、犯罪者を釈放する権限を与えられるべきである。釈放又は訴訟手続き決定のいずれが適当であるかを決めるために、一連の明確な基準が、各々の法制度内で発展させられなければならない。軽微な事件については、検察官は、適当な場合には、適切な社会内処遇を課すことができる。

 6 公判前抑留の回避
6・1 公判前抑留は、申立てられている犯罪の取調べ並びに社会及び犠牲者の保護に妥当な考慮を払って、刑事手続きにおける最後の手段として使用しなければならない。
6・2 公判前抑留の代替策は、できる限り初期の段階で用いなければならない。公判前抑留は、規則6・1で述べた目的を達成するために必要な期間以上に長が引いてはならず、また、人道的にかつ人間の固有の尊厳を尊重して運用されなければならない。
6・3 犯罪者は、公判前抑留が用いられる場合には、司法機関又は他の権限のある独立機関に訴える権利を有しなければならない。

 3 公判・判決段階

 7 社会調査報告
7・1 社会調査報告の可能性が存在する場合には、司法機関は、権限のある公認の官吏又は機関の報告を利用することができる。報告は、犯罪者に関する社会的情報であって犯罪遂行の個人的傾向及び最近の犯罪に関するものを含むべきである。また、判決手続きに関連のある情報及び勧告も含むべきである。報告は、事実に基づいた、客観的でかつ偏見のないもので、明確に確認された意見表明を伴うものでなければならない。

 8 判決の処置
8・1 司法機関は、社会的処遇の範囲を自由に決め得る場合には、決定を行うに当たって犯罪者の更生上の必要、社会の保護及び犠牲者の利益(適当な場合はいつでも、犠牲者は相談をうけるべきである。)を考慮に入れるべきである。
8・2 判決言渡し機関は、次のような方法で事件を処置することができる。
(a)警告、懲戒、訓戒のような口頭の制裁
(b)条件付きの釈放
(c)身分的制裁
(d)罰金、日数罰金のような経済的制裁及び金銭的刑罰
(e)没収又は財産収容命令
(f)犠牲者に対する損害填補又は金銭賠償命令
(g)執行猶予の宣告刑又は刑の宣告猶予
(h)保護観察及び司法的監督
(i)社会奉仕命令
(j)アテンダンス・センターへの送致
(k)在宅拘禁
(l)いずれか他の形態の拘禁代替策
(m)上記の各種処遇の併用

 4 判決後の段階

 9 判決後の処置
9・1 権限のある機関は、刑務所収用を回避しかつ犯罪者が早期に社会への再統合するのを援助するために、広範囲の判決後代替策を利用しなければならない。
9・2 判決後の処置は、次のものを含むことができる。
(a)一時帰休及びハーフウェイ・ハウス
(b)勤労及び教育のための釈放
(c)さまざまな形態の仮釈放
(d)刑の免除
(e)恩赦
9・3 判決後の処置に関する決定は、恩赦の場合を除いて、犯罪者の申請に基づき司法機関その他の権限のある独立機関による再審を受けなければならない。
9・4 刑務所から社会内処遇への釈放は、最も早い可能な段階で考慮されなければならない。

 5 社会内処遇の実施

 10 監督
10・1 監督の目的は、再犯を減少させ、かつ、犯罪への復帰を最小にするような方法で犯罪者の社会統合を援助することである。
10・2 社会内処遇が監督を伴う場合には、その監督は、法律によって規定された特別の条件に基づいて権限のある機関によって実施されなければならない。
10・3 決定された社会内処遇の枠内で、犯罪者が自己の犯行に影響を与えるのを援助することを目的とする最も適当な種類の監督及び取扱いが、各々の個別事件について決定されるべきである。監督及び取扱いは、定期的に再検討されかつ必要に応じて調整されるべきである。
10・4 犯罪者は、必要ならば、心理的、社会的及び物質的援助並びに共同体との連係を強化しかつ社会への再統合を容易にする機会を提供されるべきである。

 11 期間
11・1 社会内処遇の期間は、法律に従って権限のある機関が定めた期間を越えてはならない。
11・2 犯罪者が社会内処遇に満足に対応した場合には、その処遇の早期終了を行うことができる。

 12 条件
12・1 権限のある機関が犯罪者の遵守すべき条件を決定する場合には、社会の必要並びに犯罪者及び犠牲者の必要及び権利の双方を考慮すべきである。
12・2 遵守すべき条件は、実際的で、明確でかつできる限り少なくなければならず、また、犯罪者が犯罪行動へ逆戻りする可能性を減少させ、かつ、犠牲者の必要を考慮しながら犯罪者の社会的統合の機会を増大させることを目的としなければならない。
12・3 社会的処遇の適用開始の時に、犯罪者は、その処遇の適用を規律する条件(犯罪者の義務及び権利を含む。)について口頭及び文書で説明を受けなければならない。
12・4 条件は、犯罪者が行った進歩に従って、確立した制定法の規定に基づいて権限のある機関が修正することができる。

 13 処置の方法
13・1 適当な場合には、決定された社会的処遇の枠内で、さまざまな部類の犯罪者の個別的社会福祉指導、集団療法、在宅教育課程及び特別取扱いのような各種の施策が、犯罪者の必要に一層効果的に対応できるように開発されるべきである。
13・2 処置は、適切な訓練を受けかつ実際の経験を有する専門家によって実施されるべきである。
13・3 処置が必要であると決定された時は、犯罪者の経歴、性格、素質、知能、価値基準及び特に犯罪の実行に至った状況を理解するように努力すべきである。
13・4 権限のある機関は、社会内処遇の適用に共同体及び社会的支援制度を関与させることができる。
13・5 取扱い件数の割当は、処置計画の効果的実施を確保するために、できる限り処理できる程度に維持しなければならない。
13・6 権限のある機関は、各犯罪者について、事件記録を設けかつ維持しなければならない。

 14 規律及び条件違反
14・1 犯罪者が遵守すべき条件に違反したときは、社会内処遇の変更又は撤回を行うことができる。
14・2 社会内処遇の変更又は撤回は、権限のある機関によって行われなければならない。これは、監督官及び犯罪者の双方によって提示された事実を慎重に検討した後にのみ行わなければならない。
14・3 社会内処遇が失敗しても、自動的に拘禁処遇を科すことにすべきでない。
14・4 社会内処遇の変更又は撤回の場合には、権限のある機関は、適切な代替の社会内処遇を命じるよう努めなければならない。拘禁の宣告は、他の適切な代替策がない場合にのみ言い渡すことができる。
14・5 条件の違反がある場合に監督中の犯罪者を逮捕及び勾留する権限は、法律によって規定されなければならない。
14・6 社会内処遇の変更又は撤回が行われた場合には、犯罪者は、司法機関又は他の権限のある独立機関に上訴する権利を有する。

 6 職員

 15 採用
15・1 職員の採用に当たっては、人種、皮膚の色、性、年齢、言語、宗教、政治的意見その他の意見、国民的若しくは社会的出身、財産、出生又は他の地位を理由として、いかなる差別もしてはならない。
15・2 社会内処遇を適用する任務を与えられる者は、人間的に適合しており、かつ、可能なときはいつでも、適当な専門的訓練及び実際的経験を有すべきである。そのような資格要件は、明確に規定されなければならない。
15・3 資格のある専門職員を確保し保持するために、適当な職員身分、職務の性質にふさわしい充分な俸給及び給付金が保証されるべきであり、また、職業上の成就及び経歴向上のために充分な機会が提供されるべきである。

 16 職員訓練
16・1 訓練の目標は、犯罪者の更生、犯罪者の権利の確保及び社会の保護に関する責任を職員に明確にすることでなければならない。訓練はまた、当該機関内で協力し及び当該機関と活動を調整する必要について職員に理解させるべきである。
16・2 職員は、職務につく前に訓練を与えられなければならず、その訓練には、社会内処遇の性質、監督の目的及び社会内処遇の適用の諸形態に関する教育が含まれる。
16・3 職員は、職務についた後に、現職教育課程及び補充教育課程に出席することによって知識及び専門能力を維持しかつ改善しなければならない。

 7 篤志家その他の共同体資源

 17 公衆の参加
17・1 公衆の参加は、社会内処遇を受けている犯罪者及び家族と共同体との間の紐帯を強めるに当たって、主要な資源でありかつ最も重要な要素の一つであるので、奨励されるべきである。
17・2 公衆の参加は、共同体構成員が自己の社会の保護に寄与する機会とみなされるべきである。

 18 公衆の理解及び協力
18・1 政府機関、民間組織及び一般公衆は、社会内処遇を促進する自発的組織を支援するよう奨励されるべきである。
18・2 社会内処遇の適用に当たって公衆の参加が必要であることについて自覚させるために、定期的に会議、研究会、討論会その他の活動が組織されるべきである。
18・3 建設的な公衆の態度を創出し、それによって社会内処遇の一層広範な適用及び犯罪者の社会的統合に資する活動に導くのを助けるために、あらゆる形態のマス・メディアが利用されるべきである。
18・4 社会内処遇の実施に公衆がもつ役割の重要性を公衆に知らせるために、あらゆる努力がなされるべきである。

 19 篤志家
19・1 篤志家は、従事する職務に対する適性及び関心に基づいて慎重に選考されかつ補充されなければならない。篤志家は、かれらが果たすべき特別の責任について厳密に訓練されなければならず、また、権限のある機関から援助及び助言並びに権限のある機関と協議する機会を得ることができなければならない。
19・2 篤志家は、自己の能力及び犯罪者の必要に従って助言その他の適当な形態の援助を与えることによって、共同体との有意義な紐帯及び一層広範囲の接触を発展させるよう犯罪者及びその家族に奨励すべきである。
19・3 篤志家は、任務遂行中の事故、傷害及び公的責任について付保されなければならない。篤志家は、任務の過程で生じた授権支出については払戻しを受けなければならない。篤志家が共同体の福利のために与えた役務については、公的補償が篤志家に与えられるべきである。

 8 研究、計画、政策形成及び評価

 20 研究及び計画
20・1 計画過程の不可欠な一側面として、犯罪者の社会内処遇に関する研究の組織化及び促進に公的団体と民間団体の双方を関与させるよう、努力すべきである。
20・2 依頼人、専門家、共同体及び政策決定者が直面する問題に関する研究は、定期的に実施されるべきである。
20・3 犯罪者のための社会内処遇実施に関する資料及び統計の収集及び分析のために、研究及び情報の機構が刑事司法制度の中に設けられるべきである。

 21 政策形成及び計画開発
21・1 社会内処遇のための諸計画は、全国的開発課程内で刑事司法制度の不可欠の一部として、体系的に立案されかつ実施されるべきである。
21・2 社会内処遇を一層効果的に実施するために、定期的評価が実施されるべきである。
21・3 社会内処遇の目標、機能及び有効性を評価するために、定期的再検討を行うべきである。

 22 関連ある機関及び活動との連携
22・1 社会内処遇について責任のある部局、刑事司法制度の外の部門、保健、居住、教育及び労働のような分野における政府及び非政府の社会開発福祉機関、並びにマス・メディアの間に連携を確立するのを容易にするために、さまざまな段階で適当な機構が設けられるべきである。

 23 国際協力
23・1 収容所外取扱いの分野で国家間の科学的協力を促進するために、努力がなされなければならない。社会内処遇に関する加盟国間の研究、訓練、技術援助及び情報交換は、国際連合事務局の社会開発人道問題センターの犯罪防止刑事司法部と緊密に協力して、犯罪防止及び犯罪者取扱いのための国際連合研究所を通じて、強化されるべきである。
23・2 法律規定の比較研究及び統一は、条件付き判決又は条件付き釈放を受けた犯罪者の監督の移転に関するモデル条約に従って、収容所外取扱いの選択肢の範囲を拡大しかつ国境を越えた適用を容易にするために、推進されるべきである。
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